![家庭でできる発酵食品作りの基礎知識](https://cookry.meihan-shokuhin.co.jp/dcms_media/image/hakkkou.jpg)
健康のために役立つイメージがある「発酵食品」。スーパーマーケットなどでも手軽に購入できるものが多いですが、家庭で作れると習慣化しやすく、さまざまな料理にも活用できるというメリットがあります。しかし、家で作るのは難しいのではないかと、なかなか始められずにいる方も多いでしょう。今回は、家庭で発酵食品を作ってみたいと思う方に、失敗しないためのコツや基本的な発酵食品のレシピを紹介します。
発酵とは何か?基本的な仕組みの解説
発酵食品とは、細菌やカビ、酵母など微生物の働きにより作られている食品です。微生物の働きとは、有機物を分解してほかの物質に変化させることを指します。食材が発酵すると、栄養価や保存性がアップしたり、食材の風味が良くなったりするなど、私たちにとって有益な変化がたくさん得られます。厚生労働省の「生活習慣病予防のための健康情報サイト 」によると、発酵食品を作り出す微生物が持つ効果には以下のようなものがあるといわれています(※1)。
【発酵食品の効果】
- 免疫細胞を活性化させる効果
- 腸内環境を整える効果
- コレステロール値の上昇を抑制する効果
- がんを予防する効果
これらの効果をより高めるためには、食べ方も意識すると良いでしょう。たとえば、食物繊維と一緒に発酵食品を摂取することで血糖値の急上昇を抑えられます。また「納豆×キムチ」や「ヨーグルト×甘酒」などの食べ合わせでは、腸の働きがさらに良くなることが期待できます。ただし発酵食品は、1回食べたら効果が得られるものではないので、継続して摂取するようにしましょう。
必要な道具と材料の紹介
ここからは、発酵食品を作るために必要な道具や材料について紹介していきます。発酵食品にはさまざまな種類があり、作りたい発酵食品により必要な道具や材料は異なります。家庭で作りやすいものについて以下で紹介するので、確認してみましょう。
【乳酸発酵漬け作りに必要な道具・材料】
- 密閉できる容器
- 好みの野菜(キャベツ、タマネギ、ニンジン、キノコなど)
- 3%の塩水(カップ1に対して塩小さじ1)
- お好みでローリエなどのハーブやショウガ、唐辛子など
【ぬか漬け作りに必要な道具・材料】
- ぬか床
- 塩
- 漬ける野菜
【豆味噌作りに必要な道具・材料】
- 保存用袋
- 豆麹
- 粗塩
- 水
失敗しないためのコツと注意点
続いては、発酵食品を作る際に気をつけたいポイントを紹介します。まず大事なのは、使用する器具や容器をしっかりと消毒しておくことです。調理器具や容器に雑菌が付着していると、発酵過程で雑菌も一緒に繁殖してしまいます。使う道具は、丁寧に洗って熱湯や消毒用のアルコールを使用してしっかり消毒しましょう。鮮度が落ちた食材は表面に雑菌が増殖している場合があるので、できるだけ新鮮なものを選んでください。 また発酵食品作りは、温度管理も大切なポイントです。発酵が進む温度は、約25℃から40℃です。温度が低いと発酵に時間がかかるため、気温の低い冬はなかなか進みません。発酵しているかどうかを見極めるのは難しいですが、毎日チェックする習慣をつけ発酵具合を確認しましょう。なお、ヨーグルトメーカーなどを使用して1日で発酵食品作りをする際は、50℃から60℃にキープする場合もあります。これより高くなってしまうと過発酵になるため、注意しましょう。
基本的な発酵食品の作り方
最後に家庭で作りやすい発酵食品の作り方を紹介します。発酵食品は、料理の下味に使用することで、肉や魚などをやわらかくしたり、うまみを簡単にプラスしたりできます。また善玉菌のエサになる栄養素も豊富に含まれているため、腸内環境を整えて、免疫力アップも期待できます。コツや注意点はありますが、家庭でも簡単に作れるため、ぜひ挑戦してみてください。
醤油麹
醤油麹の作り方はとても簡単です。
【材料】
- 米麹150g
- 醤油150ml
- 追加用の醤油適宜
【作り方】
- 清潔な保存容器に米麹を入れる
- 醤油を注ぐ
- しっかりと混ぜ合わせ、蓋をして常温に置いておく
- 1日1回清潔なスプーンでかき混ぜる
- 醤油を吸い、米麹が醤油よりも出てしまう場合には、ひたひたになる程度に醤油を足す
- 1週間ほどして全体にとろみが見られたら完成
- 完成後は冷蔵庫で保存する
気温の低い時期は、10日ほどかかる場合はあります。完成後は3ヶ月くらいを目安に使い切りましょう。
ぬか漬け
ぬか漬けを作る際には、まずぬか床を作りましょう。
【材料】
- 容器
- ぬか
- 水
- 塩
- 唐辛子
- 昆布
- 漬ける野菜
- くず野菜(ニンジンの皮、キャベツの芯、大根の葉など)
【作り方】
- 容器にぬかと塩を入れる
- 水を足しながら味噌くらいの固さになるまでかき混ぜる
- 殺菌作用のある唐辛子とうまみアップのための昆布を加える
- 表面を平らにならし、捨て漬けをする
- 数日おきに野菜を替えて、数回捨て漬けしたら完成
- 好きな野菜を塩もみしてから漬ける
捨て漬けをすることで、ぬかのなかに菌が入り、発酵に必要な水分と栄養分が加わります。より栄養価の高いぬか漬けを作るためには、乳酸菌が多い大根の葉などの葉物を使うと良いでしょう。ぬか床は、完成後も毎日かき混ぜてお手入れすることが大切ですが、毎日行うのが大変な場合は、冷蔵庫で保存する方法もあります。冷蔵保存の場合、週に1回程度取り出して常温にすると乳酸菌が増えやすくなるので、美味しさをキープできます。
味噌
味噌作りは、仕込みさえ終われば熟成を待つだけなので、意外と簡単です。
【材料】
- 大豆500g
- 米麹500g
- 塩250g
- 鍋(圧力鍋)
- 保存容器
- フードプロセッサー
【作り方】
- 大豆を浸水して戻し、指でつぶせるくらいの固さになるまで茹でる
- 米麹を手でほぐし、塩を混ぜる(小さじ1程度の塩を残しておく)
- フードプロセッサーなどを使用して大豆をつぶす
- 大豆は30℃(人肌くらい)までに冷ましておく
- 2に4を加え、手でつぶしながら混ぜ合わせる
- 握り合わせるなどして、耳たぶくらいの固さにする
- 力を入れて丸めながら味噌玉を作り、清潔な保存容器に隙間がないように詰めていく
※空気が入らないように詰めて密閉する
- 瓶の上部をアルコールなどで拭き取り、最後に残しておいた塩を味噌の上にふりかける
- 空気が入らないようにラップをかけて、保存容器を布巾などで包み冷暗所に置いて半年寝かせたら完成
ラップの上から、さらに塩を入れたビニール袋などを押し込んで密閉すると、カビの発生を防げます。
塩麹
塩麹は、3つの材料(米麹・塩・水)を混ぜ合わせることで、簡単に作れます。
【材料】
- 米麹200g
- 塩95g
- 水200~250g
【作り方】
- タッパーなどに米麹と塩を入れ、よく混ぜる。塩が全体に行きわたらないと塩麹が腐敗することもあるので、混ぜ方には注意する
- 「1」の米麹と塩に水を加え、さらに混ぜる。水の量が少ないと発酵にムラが出てしまうので、麹がちょうど浸かるくらいまで水を入れるのがポイント。ここまでで「塩麹のもと」が完成する
- 「塩麹のもと」をフタやラップで密閉し、5~10日間程度寝かせてじっくり発酵させる
- 発酵させている間は、1日1回必ず「塩麹のもと」を混ぜ合わせる
- 「米の形状がやわらかくなる」「バナナや栗、甘酒のような香りがしてくる」などの変化があったら完成
塩麹の熟成期間は、季節や気温によって異なります。気温が高い夏は5日程度、気温が低い冬は発酵が遅くなるため10日程度の熟成が必要です。米の形状や塩麹の香りの変化を見ながら、熟成したタイミングを見極めましょう。
家庭で手作りして発酵食品を習慣化しよう
発酵食品を手作りするのは、ややハードルが高いイメージがありますが、意外と簡単にできることがわかりました。発酵食品は、腸や肌の調子を整えてくれたり、うまみがプラスされるため簡単に料理の味が決まったりするなど、うれしい効果がたくさんあります。家庭で作ると、常備できるためいつでも取り入れられるのがメリットです。普段の料理の味をワンランクアップさせる発酵食品作りにぜひチャレンジしてみませんか。
【出典】 ※1 厚生労働省「生活習慣病予防のための健康情報サイト」 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-026.html